花火の原料となる火薬は、紀元前に中国の錬金術師によって偶然発明されたと言われています。その後13世紀に中国の大部分を侵略したモンゴル人が使用し一気に広まり、シルクロードを通じてヨーロッパに伝わったそうです。実用化された当初は軍事利用されていた火薬が花火として利用されるようになったのは14世紀後半のイタリア、フィレンチェで祝祭用に打ち上げられたのが始まりのようです。
日本には16世紀の戦国時代、火縄銃と共に火薬が伝わり、武器や、軍事的伝達手段の「のろし」として使用されました。観賞用としては、天正17年に伊達政宗、慶長18年に徳川家康が見たという記録がありますが、大衆に広まったのは江戸時代に入ってから。戦が減り世の中が安定していく中で、火薬職人達はそれまでの鉄砲作りの仕事が減り、花火作りを始めたそうです。花火好きの3代将軍徳川家光が奨励したこともあり、江戸庶民の間でも花火が大流行。ところが、これにより火災が多発したことで、幕府は江戸市中での花火禁止令を出すことになります。それでも人々はこの魅力的な娯楽をなかなかやめられず、その後も5回もの禁止令が出され、墨田川の河口付近に限定して許可されました。
花火大会の起源とされる両国川開き(現:隅田川花火大会)は、享保18年に時の将軍徳川吉宗が、前年江戸で流行した大飢饉とコロリ病(コレラ)による死者の慰霊と災厄除去を祈願し墨田川沿いで実施した水神祭で花火を打ち上げたことが始まりと言われています。年中行事となった両国川開きでは鍵屋弥兵衛(かぎややへえ)と、鍵屋から独立した玉屋市兵衛(たまやいちべえ)という花火師が打ち上げを担当し、観客たちが素晴らしいと思った方の屋号を叫んで競い合ったそうです。現在でも花火を見る時に「かぎや~」「たまや~」という掛け声が定番になっているのはこの名残りです。
この夏もまた多くの花火大会が開催されていますが、花火が江戸時代から人々を魅了し続けていると考えるとより味わい深いです。
■打ち上げ花火の種類
打ち上げ花火は、玉の割れ方で3つの種類に大別されます。
割物(わりもの) | 星(火や煙を出す火薬)を割薬(星を飛ばすための火薬)で球形に飛ばす花火。 |
ポカ物 | 玉が上空で、くす玉のように「ポカッ」と2つに割れ、中の星が落ちていく花火。 |
小割物(こわりもの) | 玉が上空で開き、あとからたくさんの小さな玉(小割)が一斉に開く花火。半割物(はんわりもの)とも言います。 |
また、花火玉は一発ごとに、例えば「昇曲導付八重芯変化菊(のぼりきょくどうつきやえしんへんかぎく)」などの玉名という名前がつけられます。難解に見えるこの名前は、花火玉に仕込まれた内容を表す単語を一定の決まりに従って組み合わせ、打ちあげてから消えるまでの現象を表現しています。
種類 | 基本の玉名 | 特徴 | 割物 | 菊(きく) | 星が丸く尾を引きながら開くのが特徴。花弁の先の色が変化するものは、「変化菊(へんかぎく)」と呼ばれます。 | 牡丹(ぼたん) | 星が尾を引かず飛び散るように開く。 | 冠菊(かむろぎく) | 地上まで垂れ下がるように長くゆっくり尾を引く。 | 型物(かたもの) | 蝶々、ハートなどの具体的な形を描く花火。 | 椰子(やし) | 太い光を出して椰子の葉のような形に開くようにデザインされた花火 | 万華鏡(まんげきょう) | 和紙で包んだ星を分散させて玉につめた花火。夜空で開くと同じ色の花弁がまとまって開き、万華鏡のように見えるのが特徴です。 |
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種類 | 基本の玉名 | 特徴 | ポカ物 | 柳(やなぎ) | 光が上空から、柳の枝が垂れ下がるように落ちてくる花火。 | 蜂(はち) | 蜂が飛び回るように、星がシュルシュルと不規則に回転する花火。 | 飛遊星(ひゆうせい) | 流星のように光の尾を引いて、星が不規則に飛び回る花火。 | 信号雷(しんごうらい) | 昼に打ち上げられる花火の一種で、運動会やお祭りの開催合図を告げる。 | 煙竜(えんりゅう) | 昼に打ち上げられる花火の一種で、色煙(紅、黄・青・緑・紫など)の線で竜を描く。 | 花雷(はならい) | 通常の花火よりも大きな音を鳴らす「音物花火」の一種で、音と共に強い光を放つ。 |
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種類 | 基本の玉名 | 特徴 | 小割物 | 千輪(せんりん) | 小割物(半割物)の代表的な種類。玉が上空で割れ、一瞬遅れてたくさんの菊の花のような花火が一斉に開くのが特徴。 |
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種類 | 特徴 | スターマイン | 花火大会のフィナーレでよく耳にする「スターマイン」は花火の種類ではなく打ち上げ方法の呼称で、いくつもの花火を組み合わせて連続で打ち上げる方法のことです。 |
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